柿の木日記・
アウトリーチプログラム
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2014年7月14日(月)
東京バレエ団プリンシパル&ソリストインタビュー
8/6~8/10までの5日間、東京バレエ団による「第2回めぐろバレエ祭り」がめぐろパーシモンホールで開催されます。このイベントでは、公演、レクチャー、バレエ体験など、バレエに関するプログラムが盛りだくさんです。
バレエ祭りのメインのひとつになるのが、古典の名作「白鳥の湖」の第2幕と、現代バレエの傑作「ボレロ」を一度に楽しめる公演です。 今回、主演のみなさんにお話をお聞きするため、目黒通りに面した東京バレエ団に伺いました。***
まずお話を伺ったのは、東京バレエ団が誇るプリンシパル、上野水香さん。 今回上野さんが主演するベジャール振付のボレロは、世界でも選ばれたダンサーだけが踊ることのできる作品です。上野さんにとっての「ボレロ」とは・・・?
<上野水香 Mizuka Ueno>神奈川県生まれ。93年、15歳でローザンヌ国際バレエコンクールにてスカラシップ賞を受賞後、モナコに2年間留学。2004年、東京バレエ団入団。フィレンツェにて『ドン・キホーテ』に出演し、東京バレエ団デビューを飾る。『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『ジゼル』など主な古典全幕作品やモーリス・ベジャール振付『ザ・カブキ』など数々の舞台に出演し、世界各地で高い評価を受け好評を博している。めぐろパーシモンホールには、2013年「めぐろ子どもバレエ祭り」の「こどものためのバレエ『ねむれる森の美女』」にオーロラ姫で出演している。
昨年のめぐろバレエ祭りでは、上野さんは子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」でオーロラ姫を踊られましたが、印象に残っていることはありますか?普段の会場の雰囲気と全く違っていて、いい思い出として残っています。子どもにとって馴染める内容になっていますし、それを見た「子どもたちの反応を見るのはすごく面白くて楽しかったです。また、大人の方も楽しんでいらっしゃったのが印象的です。私自身オーロラを演じるのが久々だったのですが、その姿を見て喜んでくださったのも嬉しかったですね。バレエを見たことのない、またバレエにあまり馴染のない人でも親しみ楽しんでもらうことのできるバージョンでしたので、これをきっかけにバレエを好きになっていただけるといいと思います。
今回は現代バレエの傑作、ベジャール振付の「ボレロ」を踊られますが、この作品の魅力はどんなところですか?「ボレロ」は、私のレパートリーの中でも大切なものの一つです。また、踊れる人が限られているという意味でも大切にするべきものだと思っています。作品としても文句なく魅力的な作品です。構成も踊りも完璧に「ボレロ」という音楽を表現している作品だと思います。また、その魅力を伝えるのは私たちダンサーの役目だと思っています。すごくシンプルで、踊り込めば踊り込む程に変化していき、その人自身が舞台にありのままに出る作品なのでやりがいがあります。私の「ボレロ」は女性的なタイプで、男性のような迫力などで魅せる踊りではありません。どちらかというとニュアンスや女性らしさ、逆に強くしっかりと立っている女性のイメージもありますので、遠目よりも近い場所で見ていただく方がそのイメージや発せられるドラマが伝わりやすいのではないでしょうか。そういった意味ではめぐろパーシモンホールは小さい劇場ですので、ダイレクトに感情が伝わると思います。
赤いテーブルの上では、その時の体調や感情全てが反映される。自分の世界でもあり、自分の鏡でもあり、あそこに立つと何も隠せない、全てが露わになってしまう。けれども、それでいてとても自由なんです。たった一人の王国のようなものだと感じています。お子さんが「ボレロ」を見てどのように感じるかは全くわかりませんが、ただ、観ているうちにだんだんと引き込まれていく、そういった力を「ボレロ」は持っていますので、楽しんでもらえると思います。
バレエを始めてから、上野さんが踊り続けようと思った転機は何でしょうか?転機はローザンヌ国際バレエコンクールです。ローザンヌで賞をいただいたことで、その後もバレエを続けていこうと思いましたし、将来性があると認めていただいたことで、続けていっていいんだなと思いました。
上野さんが踊り続けている原動力は何ですか?昨年怪我をしてしまったのですが不思議なことに怪我をしたその日から「早く踊りたい」と思っていました。やはり踊ることが好きですし踊っている時が一番自分自身でいられる気がしています。踊っているとイヤなことも忘れますし、一番心地良く、だからこそ踊りに戻ってしまい、結果的に踊り続けているのだと思います。
世界の舞台で踊られている上野さんですが、国による反応の違いはやはりあるのでしょうか?「ボレロ」に関して言うと、一番印象に残っているのは、デンマークのコペンハーゲンで踊った時です。盛り上がりが尋常ではなくて、観客の皆さんが立って地団駄を踏んでいました。飛び上がる人もいるほどでした。国や劇場によって反応はさまざまですが、日本の中でも毎回舞台によって違ってきます。めぐろパーシモンホールは、劇場の大きさなどもそうですが、観客に伝わりやすいというホールの良さをとても感じました。
プライベートではドライブがお好きと聞きましたが...。運転がすごく好きで、車に乗っていることは全く苦にならないんです。ドライブしながら聞く曲は、クラシックからマイケル・ジャクソン、ジェーン・バーキン、日本のポップスもランダムに入っています。 「次、何の曲がくるんだろう」なんて楽しみながら運転しています。
これからバレエの世界を知りたいと思っている人、バレエのレッスンに励む子どもたちにメッセージをお願いします。めぐろバレエ祭りはバレエ初心者の方に非常にやさしい内容になっています。まっさらな気持ちでホールに足を運んでいただいて、楽しんでください。また、ワークショップで皆さんと過ごす時間もあります。これまでも数回ワークショップを担当したことがあるのですが、私は自ら踊ってしまうんです。視覚から入れるので、分かりやすいのではないでしょうか。そして、バレエは基礎がとても大事ですので、その基礎の大切さをお子さんにお伝えし、少しでも力になれればと思っています。
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レッスン後に駆けつけてくださった、前回のオデット姫役が大好評だったというのもうなずけるたたずまいの渡辺さんと、初の古典作品の王子役に挑む森川さんに、「白鳥の湖」のこと、パートナーとしてのお互いの印象、そして目黒という土地の印象についても伺うことができました。
<渡辺理恵 Rie Watanabe>福岡県出身。5歳よりバレエを始める。04年、東京バレエ団入団。『白鳥の湖』で初舞台を踏む。際立つラインの美しさ、柔軟性を活かした踊りで活躍する期待の若手バレリーナ。 09年に『白鳥の湖』でオデットに抜擢され初主演を果たしている。12年、新制作「子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』」リラの精、白雪姫で、めぐろパーシモンホールに出演。13年には『ラ・シルフィード』、モーリス・ベジャール振付『ザ・カブキ』に出演し、高い評価を得ている。14年2月、ジョン・レノマイヤー振付『ロミオとジュリエット』バレエ団初演でロザリンデ、ルチアーナを演じている
<森川茉央 Mao Morikawa>東京都出身。10歳よりバレエを始める。東京バレエ学校を経て、08年東京バレエ団入団。同年『ドナウの娘』で初舞台を踏む。長身を生かした、雄々しく力強い踊りで古典から現代ものまで幅広く活躍する。 08年、第23次海外公演で『ザ・カブキ』『ギリシャの踊り』『ボレロ』を踊る。12年、新制作「子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』」おおかみ、4人の王子でめぐろパーシモンホールに出演。13年、『ザ・カブキ』で六代目吉良之助として初主演を果たす。14年2月、ジョン・ノイマイヤー振付『ロミオとジュリエット』バレエ団初演でティボルトを演じた。8月めぐろバレエ祭りで『白鳥の湖』王子を初主演する。
めぐろパーシモンホールには、12年、13年と2年連続で子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」でご出演いただきました。印象に残っていることはありますか?
森川:終演後、ホワイエで観客のみなさんをお見送りしたのですが、後にも先にもお見送りシステムはあの時だけでしたので、とても新鮮で印象に残っています。僕はおおかみ役だったのですが、大人気だったと思います!渡辺:かぶり物は人気がありますよね!
『白鳥の湖』の見どころはどんなところですか?渡辺:この演目は、バレエ初心者の方でも分かりやすい作品ですし、知らない人はいないというくらい有名です。ただ、私自身5年前に踊ってみて難しさをすごく実感しました。『白鳥の湖』と言えば、美しく優雅な踊りが見どころですが、その踊りを表現するために、多くの練習と訓練を重ねています。そのような努力があって初めてあのような美しい場面があるのです。
オデット姫と王子としては初共演となりますが、お互いの印象を教えてください。森川:昨年末『ザ・カブキ』で理恵さんとは共演していますが、本格的にペアを組んで踊るのは初めてなのでとにかく楽しみです。理恵さんは絵から出てきたようにとても綺麗ですし。
渡辺:褒めていただいてありがとうございます(笑)。茉央くんは私より年下ですが、とてもしっかりしていて頼りになるパートナーです。
ペアを組む人によって、作品のイメージは変わるものなのでしょうか?森川:パートナーによって間違いなく変わりますね。
渡辺:私もこれまでに組んだパートナーが多いわけではないので何とも言えませんが・・・でもやはり変わると思います。
パートナーへの信頼も大事ですか?渡辺:もちろんそれは重要です。
森川:僕にとっては古典の初めての主役なので、理恵さんに頼らざるを得ない感じです。理恵さんは先輩ですが、遠慮せず一緒にいいものを創っていけたらいいなと思います。
お二人は東京バレエ団のある目黒には10年以上通われているとのことですが、目黒にはどんな印象をお持ちですか?渡辺:目黒はとても穏やかで静かな印象です。でも、夜道が閑散としているわけではなく、落ち着いた雰囲気がとても素敵だと思います。長い間こちらにいるので、目黒はもう落ち着ける場所になっています。目黒通りをのんびり歩きながらウィンドーショッピングも楽しいです。
森川:目黒川の春の桜はきれいですよね。目黒は、都会でありながら自然も多い。大通りから一歩入るとかなり印象が変わります。それこそ、めぐろパーシモンホールの周辺は、同じ目黒でも全く印象が異なり、自然がある都会って、すごく素敵だと思います。
今回のイベントには、バレエを習っている、これから始めたいという子どもたちが大勢来場します。お二人とも子どもの頃にバレエを始められたと思いますが、バレエを続けていこうと思った理由、きっかけなどがありましたら教えてください。渡辺:踊るのが単純に楽しいのだと思います。幼稚園のお遊戯会で楽しく踊っている私を母が見て、踊らせてあげようと思いバレエ教室に連れて行ってくれたのが、今も続いています。怪我や体調管理、きついレッスンなど、厳しいことはたくさんあります。同じことを続けているつもりでも同じではない。でも、そういった全てが楽しいので、それが私が続けている理由です。
森川:僕は小さいころから背が高く、姿勢がすごく悪かったんです。姿勢を良くするためにバレエを始めたのですが、最初は週1回の練習さえもさぼっていました。でも、12歳の時、生で男性ダンサーの踊りを見たとき、「めちゃくちゃかっこいい。バレエっていいかもしれない」そう思って、その日のうちに先生に「プロになる」と宣言して、次の週からレッスンを週5日に増やして、東京バレエ学校に通うことになりました。好きでないと続けられない厳しさはありますが、好きなことを職業に出来ているということが、本当に幸せなことだと実感しています。
今回のめぐろバレエ祭りでは、男子のためのトークイベントや、お父さんと一緒に参加する体験イベントがあります。来場される皆さん、バレエを習っている、始めたいという子どもたちにメッセージをお願いします。森川:ダンスだけに限らず、好きなことを続けていく、その思いを貫き通す。そして、チャレンジしてみることが重要だと思います。僕は正直、バレエのために色々なことを犠牲にしてきました。修学旅行に行った記憶もありません。でも、頑張り続けていると、犠牲だとは思わなくなるんです。だから、どんなことでもいいので、好きだと思ったことは続けてほしいと思います。それと、大人の男性の方がバレエに触れ合えるのは斬新な企画です。素晴らしい!
渡辺:私の父はバレエにあまり興味がなかったので、今回のようにお父さんに見てもらえたり、一緒に踊る機会があるというのは、子どもにとって励みとなりますし、応援してくれる人が増えるという意味でもとてもいい企画だと思います。これをきっかけにバレエって楽しいんだな、ということを知ってもらえたらと思います。
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ちょうど東京バレエ団の海外公演が間近に控えていたお忙しい時期、お時間をいただきありがとうございました!
世界の舞台で観衆を熱狂させてきた上野さんのボレロ、そしてすでに息がぴったりとあっている渡辺さんと森川さんによる「白鳥の湖」の名場面に、ますます期待が高まります。
[公演情報はこちら]
・東京バレエ団 『白鳥の湖』第2幕より&『ボレロ』 http://www.persimmon.or.jp/performance/hosting/20140512165400.html・東京バレエ団 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』 http://www.persimmon.or.jp/performance/hosting/20140512160800.html
[イベント情報もチェック!]
・めぐろバレエ祭りイベント 上野水香 公開レッスン http://www.persimmon.or.jp/performance/event/20140612155000.html・めぐろバレエ祭りイベント 一緒におどってみよう! http://www.persimmon.or.jp/performance/event/20140612160900.html
ほかにもいろいろなイベントがあるので、トップページから気になるイベントを探してみてくださいね。
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