柿の木日記・
アウトリーチプログラム
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アウトリーチプログラムなどについての
情報を発信しています。
2025年3月12日(水)
【アウトリーチプログラム】東京都立目黒高校
東京都立目黒高校 1年生 240名
2025年3月12日(水)①10:50~11:30 ②11:50~12:30
出演:毛利文香(ヴァイオリン)、兼重稔宏(ピアノ)
【プログラム】
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」より 第1楽章
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタより 第2楽章
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番より 第2楽章、第4楽章
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主催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
共催:NPO法人子どもに音楽を
協賛:公益財団法人北野生涯学習振興会
後援:目黒区教育委員会
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めぐろパーシモンホールのアウトリーチプログラムでは目黒区内の高校にも伺っています。
今回、都立目黒高校では1年生の生徒さんを対象とした、ヴァイオリンの毛利文香さんとピアノの兼重稔宏さんの演奏会です。
最初に演奏したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番は「春」という通称がついています。
お二人ともドイツに留学されていたので、ドイツでの春という季節はどんなものなのか、お話ししてくれました。
寒く暗い季節が長いので、春の訪れが本当に鮮やかでうれしく感じるそうです。
そういったことを知ったうえで聴くと、この曲が「春」と呼ばれる理由がよくわかったのではないでしょうか。
今回はロシアの作曲家、ショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタの第2楽章をプログラムに入れました。
おそらく「難しい」と感じられる作品かもしれませんが、演奏の前には兼重さんから、ショスタコーヴィチについて、彼を取り巻いていた状況について詳しいお話しがありました。
生徒さんの感想からも、このお話しがこの作品を聴くうえで大きな手掛かりになったことがうかがえました。
皆さんが感じたことや考えたことを率直な言葉で、素直な気持ちを書いてくださったので、このプログラムの様子がよく伝わる感想文をたっぷりとご紹介したいと思います。
生徒たちの感想
・ヴァイオリンとかあまり生で見たり聞いたりしないので、とても新鮮だった。
最後に質問した際に色々と話してもらえて、貴重な機会を体験できてよかった。ありがとうございました。
・お二人とも終始雰囲気が穏やかで、演奏後に質問に行った時も壁を感じず、質問にも丁寧に笑顔で返してくださって、とてもうれしかった。
・特にショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタが印象的だった。ショスタコーヴィチの焦燥感がヴァイオリンの珍しい奏法やピアノで鮮明に表現されていたと思う。聴いていたらこちらまで焦りそうになった。
クラシックといえばテンポの緩急や強弱の差をつけることが定番だが、このソナタにはそういった緩急はなく、ひたすらに速く急いでいるような曲だった。ピアニストの方がおっしゃっていたように、当時の政府に抑圧されてきた時代背景がとても伝わってきた。
これまでクラシックはホールで聴いてきたため、あれほどの近さで聴くのは初めてだった。プロの生演奏をあの距離で聴くのはとても迫力があった。
・私は特に「春」という曲が好きでした。ドイツの春がそんなにすてきな感じだとは知らなかったけれど、曲を聴くことで情景を思い浮かべることができました。
・ヴァイオリンが300年前のものだときいて、楽器はそんなに古いものがあるのだと驚きました。興味がわいたので楽器の歴史なども調べていこうと思います。
・普段クラシックを聴いているが、生の演奏を聴くのはあまりないので貴重な機会だった。生の演奏では奏者の表情やしぐさ、動きなど、耳だけから聴くのと違って視覚など、体全体で楽しめた。
・弦を指ではじくなどの様々な演奏方法を近くで見ることができておもしろかったです。
どの曲も、背景を自分なりに理解して演奏していることを知って、音楽は興味深いと感じました。
・ドイツの冬から春に向けて一気に変化するといった、知らないことも教えてくださって、行ってみたいなと思いました。特に2曲目が印象に残りました。この曲についてたくさん解説してくださって、より楽しんで聞くことができました。激しい曲調で、私にはまだ作曲者の思いみたいなものは分からなかったけれど、とても印象的で素敵な曲でした。
・「春」はヴァイオリンとピアノの音がぴったりそろっていて、コロコロとかわる音がとても楽しかったです。2曲目(ショスタコーヴィチ)は1曲目とは大きく違い、荒波の中にいるような雰囲気を感じました。ピアノの低音が重くてかっこよかったです。3曲目(ブラームス)の第2楽章は、ヴァイオリンの音の伸びが目立っていて、物語の中にいるかのように思えました。第4楽章では不安定ながらも堂々としていて圧倒されました。曲と曲との間のお話もどれも興味深いものでした。
・作曲家がいた時代の状況を知ったうえで曲を聴くと、音の節々に込められた感情がにじみ出ているように感じた。また、ピアノとヴァイオリンが奏でる音が、たまに声のように聞こえることがあり、その時に音楽というのは、現代に当時の人間を蘇らせる手段であり、今と過去、または今と未来をつなげるものだと考えた。
・クラシック音楽はとても好きで普段からよく聞いているけれど、もっとクラシックに親しむために知識をつけたいと思うきっかけになりました。大勢の前で質問をするのは苦手だし、すごく緊張したけど頑張って質問してみて良かったと思いました。ベートーヴェンの「春」はよく聴くので生で聴いたときは本当に感動しました。
・「春」の演奏はヴァイオリンの音が部屋全体を巡っておおっているかのような感じがした。色々な方向から音が聞こえてくる不思議で面白い感じがした。音が体中にじんわりしみこんでいくような心地がし、何かあたたかいものにつつまえている安心感のようなものを感じた。どの曲もすごく心に刺さり感動しました。ありがとうございました。
・私は幼いころからピアノを習っていたのですが、中途半端な状態でやめてしまった過去があります。ですが、今日の兼重さんの音色がとても印象的で忘れられないもので、もう一度ピアノに挑戦してみようと思いました。
・特にショスタコーヴィチのソナタが心に残っています。自由に曲をつくることができない中でも、自分を表現しようと抵抗していたり、不満を感じていたりする様子がひしひしと伝わってきました。音楽は人の感情をここまで表現することができるのだと、音楽の可能性を改めて感じることができました。
・特に2曲目(ショスタコーヴィチ)が印象的でした。ピアノとヴァイオリンの音がおそらく、あえて不気味に作られているのだろうと思いました。ヴァイオリンから出ると思っていなかったような音を活かして作曲されているというところに、ショスタコーヴィチの力が感じられました。
・お二人が心を込めて、音楽に寄り添い向き合って演奏している姿が、とてもかっこよかったです。
・2曲目の、ハーモニーというよりは2つの音色が独立して走っているような感じが好きでした。
・特にブラームスのヴァイオリン・ソナタは聴くことに集中しすぎて、現実感がなく、思い出したくてもはっきりと思い出せないほどです。夢のような時間でした。
また、ショスタコーヴィチのソナタはあれほど激しく内に秘めた思いを爆発させたような曲であったのに、実はヴァイオリニストに向けたプレゼントであったのには驚かされました。そして、昔の曲であっても昔ではなく今のこととしてとらえていると聞いたとき、歴史を勉強するときに心に留めておきたい考え方だなと思いました。
・演奏が本当にすごかったです。特にブラームスの曲がすごく好きでした。穏やかな第2楽章から情熱がみられる激しい第4楽章への転換がすごかったです。
・ブラームスの第2楽章はおだやかな印象を受けたが、第4楽章になると打って変わって激しい曲調となり驚いた。第1楽章と第3楽章はどのような曲調なのか興味をもったので、すべて聞いてみたいと思う。
・ショスタコーヴィチのような激しい曲は他の穏やかだったり明るい曲より正直なじみにくなと今まで思っていたのですが、ショスタコーヴィチについてや曲の背景などを知ったうえで聴くと、私も曲の世界観に入り込めるような気がしてとても楽しかったです。ベートーヴェンの「春」もドイツでの春を知ることでより深く曲を楽しめ、ただ聴くだけではない音楽の奥深さを感じることができました。
・ショスタコーヴィチの曲が現代のfunkに近く熱い情熱のようなものを感じ、今日聴いた曲の中で一番個人的に心を動かされました。
時代が違っていても環境が違っても、人に何か思いを伝えたいという気持ちがあることを知れて、なかなかない演奏会を楽しむことができました。ありがとうございました。
・才能と努力に関しての質問をした者です。質問に答えてくださりありがとうございました。
私は何事も才能がなければ始まらないと思っていましたが、「まず才能を見つける努力をする」という言葉に心を打たれました。これからは、自分の才能を見つけるための努力をして、やりたいことを見つけていきます。
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